銅像ハンターtaguttiの銅像ハンティング記

銅像好きがこじれてよじれて20年以上。日本中の銅像ハンティングは続きます…

鳥取県編 その18

〇うわん…江戸時代の佐脇嵩之『百怪図巻』や鳥山石燕の『画図百鬼夜行』などに載る妖怪。鉄漿をつけた妖怪で、両手を振り上げている。いずれの本でも絵のみで説明がないところから正体は不明。熊本や鹿児島でお化けのことを「ワンワン」「ワン」ということからの関連やかつて日本の公家や武士が鉄漿を男子もしていたことから、そういう家柄の妖怪、石燕の画では、廃屋の塀から現れていることから屋敷の怪、佐脇の画では三つ指なので鬼との関連などが指摘されている。 

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〇油すまし…熊本県に伝わる妖怪。天草の逸話では、妖怪の噂話をすると出てくるという。近年は、全身に蓑を羽織ったすまし顔の妖怪で、昌泰は油を盗んだ罪人の妖怪とされる。これは水木しげるの創作とされる。 

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〇カシャボ…カシャンボとも。紀伊(現和歌山県)南部に伝わる妖怪。山に移り住んだ河童の変化という。6,7歳ほどの子ども程度の背丈で、頭に皿をかぶり、青い衣を身につけているという。犬には見えるが人には見えないとも。人の唾を嫌うとされる。

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〇豆狸…タヌキの妖怪。西日本に多く伝わる。『絵本百物語』によれば、広げると八畳もある陰嚢を持ち、イヌくらいの大きさで、通常のタヌキよりも知能が高く、陰嚢に息を吹きかけて幻景を見せたり、自ら陰嚢をかぶって別の者に化けたりするという。

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〇シーサー…沖縄県などでみられる伝説の獣。もとは「獅子」でライオンを意味するらしい。沖縄本島南部の八重瀬町あたりで、江戸時代(琉球王国時代)に、火事が多発した際、風水師が「獅子の像を作り、八重瀬岳の方に向けるといい」と助言したところから始まるという。仏教の影響か阿吽像1対で置かれることも多い。 

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〇天井なめ…鳥山石燕の『百器徒然草』に載る妖怪。長い舌で天井を舐め、天井に生じる「シミ」は、この妖怪の舐めた跡であるという。石燕の創作した妖怪とされるが、モデルは室町時代の『百鬼夜行絵巻』であるらしい。天井のシミは様々な形に見え、時には妖怪や人の顔に見えて恐怖に駆られることもあるため、妖怪とされたのではないか? 

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〇家獣…水木しげるの『悪魔くん』に出る妖怪。悪魔くんの操る十二組の白悪魔の第八使徒。「バウー」という個人名がある。多数の窓のある巨大な球体に一対ずつの手足と多数の枝が生えた、一見パイナップルのように見える姿である。全身の窓を使って光のエネルギーを出し入れする。空中や水中も自由に移動でき、巨大な胎内に他人を入れることもできるため、悪魔くん一行の移動手段としても活躍した。 

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〇魔法陣の悪魔くんメフィスト悪魔くんは悪魔を呼び出すとき、「エロイムエッサイム、我は求め訴えたり」と呪文を唱える。この呪文は18、9世紀のフランスで流布した悪魔書に載る、悪魔を呼び出す呪文らしい。 

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 (台座をよく見ると魔法陣が書かれている)

 

〇針女…濡れ女子(ぬれおなご)、笑い女子(わらいおなご)とも。愛媛県南部宇和島地方に伝わる妖怪。人間の女性の姿だが、長いざんばら髪の先端に鈎針上の鉤がついている。夜道で男に微笑みかけ、笑い返すと急に襲い掛かり、髪の鉤で捉えられ、どこかに連れ去られるという。 

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〇土ころび…土転び。槌転びとも。鳥取県三朝地方に伝わる妖怪で、槌に似たヘビとされる。山間部の山道を歩いていると、人の足元に転がってきてかみつく。「野槌ヘビ」や「ツチノコ」とも言われる。直径30㎝長さ90㎝ほどで、樽が転がるように地上を転がりながら人を追いかけるとも。

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鳥取県編 その17

〇木の葉天狗…江戸時代の文献などに多く見られる天狗の一種。境鳥とも呼ばれる。人と同じような顔と手足を持つが、嘴、翼、尾羽を持つという。カラス天狗の一種とも見なされている。 

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〇雨降り小僧…鳥山石燕の『今昔画図続百鬼』に載り、江戸時代の黄表紙にも多く絵が載る妖怪。中骨を抜いた和傘をかぶり、提灯を持った姿。中国の雨の神「雨師」に仕える侍童(貴人に仕える子供)と述べられている。水木しげる妖怪ロ-ドでは、「雨を調節する役目」と記される。 

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〇すっぽんの幽霊…あるスッポン好きの男が、スッポン料理を食べにいくと、主人の顔がスッポンになっていた。以降その男はスッポンが食べられなくなったという。スッポンが「食いついたら離さない」というところから大変執念深い性格とされ、そこから生まれた話か?この話の由来はやや不明瞭(名古屋あたりの話とか、『北越奇談』に載るとか)。 

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〇お歯黒べったり…目も鼻もない顔に、お歯黒をつけた大きな口だけがある女の姿をした妖怪。江戸時代の『絵本百物語』(竹原春泉斎)に登場する。のっぺらぼうの一種と考えてもよい。 

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〇かみきり…「髪切り」(黒髪切りとも)。人の頭髪をひそかに切るという妖怪。江戸時代に散発的に記録されている。キツネとも「髪切り虫」(本当のカミキリムシとは違う)とも人の仕業ともされる(人の場合は偏執狂やカツラ屋の仕業とも)。 

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〇一反木綿…薩摩国(鹿児島県)肝属郡高山町(現肝付町)に伝わる妖怪。約1反(長さ約10m、幅約30㎝メートル)の木綿のようなものが夕暮れ時にヒラヒラと飛んできて、人を襲うとされる。首に巻きついたり顔を覆ったりして窒息死させる。または人を体に巻き付けて空へと飛び去って行くとも。もともとは単なる布状だったが、やがて手足が生える姿とされた。地域的に限られる妖怪だったが、水木しげるが取り上げて一気に有名な妖怪となった。水木は二つの目と二つの腕をつけた姿で描いた。

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〇石見の牛鬼…西日本各地に伝わる妖怪。主に海岸に現れ、人間を襲うとされる。獰猛な性格で、毒を吐き、人を食い殺す。頭はウシで首から下は鬼の胴体を持つ。『百怪図巻』などでは、牛の首にクモの胴体の姿で描かれる。ここでもその姿である。 

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ねずみ男水木しげるの『ゲゲゲの鬼太郎(墓場の鬼太郎)』に登場する鬼太郎の悪友で、人間と妖怪の間に生まれた半妖怪。実在の妖怪ではない。欲に目がくらんで鬼太郎の敵方につくが、結局最後に失敗して鬼太郎らに懲らしめられ、改心して鬼太郎の味方につく。「ビビビのねずみ男」と称する。本名は「ペケペケ」。とにかく不潔である。普段は主に金と女と食い物くらいにしか興味がない。頭はよく、高い情報収集力と人間社会への順応性、応用力を持つ。善悪の境界にいるトリックスターのせいか、鬼太郎ロードでは人気が高いのか、像は撫でられてツルツルになっている。ブログの作者(私)も一時プロフィール写真をこの像にしていた…。

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(駅前から始まるロードの最初の信号のある交差点に立つ、握手できるねずみ男像)

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(かつてあったこの像は今は無いようだ…)

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(神戸ベーカリー前の橋のところにいるねずみ男像)

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境港駅前の「水木先生執筆中」像の左端)
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(「河童の泉」の下で泳いでいます。ねずみ男は泳ぎが苦手なはずなのに…)

鳥取県編 その16

〇夜行さん(やぎょうさん)…阿波国徳島県)に伝わる妖怪。大晦日・節分・庚申の日・夜行日(陰陽道による物忌みの日)に現れ、首切り馬(首のない馬の妖怪)に乗って徘徊する鬼の仲間。遭遇した人は投げ飛ばされたり、馬の脚で蹴飛ばされたりしてしまう。運悪く遭遇してしまったら、草履を頭にのせて地面に伏せていると通り過ぎていく。地域によっては「首切り馬」そのものを「夜行さん」と呼ぶところもある。 

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〇川猿…遠江国静岡県榛原郡に伝わる妖怪。川辺に棲み、体中から魚の臭いがするという。子供の姿で人を化かしたり、馬はこの妖怪に会うと倒れて死んでしまったりするらしい。弱点は目と股で、ここに矢を受けるとたちまち弱ってしまう。性格的には臆病だが、助けてくれた人の顔は忘れないという。 

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〇やまびこ…山彦。山の神、妖怪。山や谷の斜面に向かって発した音(声)が、反響して少し遅れて返ってくる現象を、山彦が応えた声や山彦の起こした現象として考えたところから生まれたらしい。 

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〇白うねり…白溶(容)裔。鳥山石燕の『百器徒然袋』にある妖怪。古い布巾や雑巾が化けたもの。人間を襲い、体を覆う不快な粘液と悪臭で人を気絶させるという。ただ、石燕の創作した妖怪と思われる。 

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〇倉ぼっこ…岩手県遠野地方に伝わる妖怪。倉の守り神とされる。子供ほどの背丈で、全身が毛むくじゃら、頭髪が前身を覆うほど長い姿。人に危害を加えず、むしろ人を助けるという。 

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〇足長手長…日本や中国に使わる妖怪。「手長足長」で1種の妖怪ではなく、「手長人」「足長人」という2種の妖怪である。手長人は「手長国」、足長人は「足長国」の住人で、名前のとおりである。海で漁をする際には、手長人・足長人が常にペアとなって出かけ、足長人が手長人を背負って海に入り、手長人が魚を捕まえるという。中国古代の地理書『山海経』に記された「長股」「長臂」にあたるとされる。 

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〇川うその化け物…タヌキやキツネのようにカワウソも化けるといわれていて、カワウソは、夜になると頭にかぶる川笠を逆さにかぶり、人間の子どもに化けて酒を買いに行く。きれいな女性に化けることもある。像の左手に持つ提灯は、油ではなく酒が入っているという。

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〇毛受毛現(けうけげん)…鳥山石燕の『今昔百鬼拾遺』にある、毛むくじゃらの妖怪。「希有希現」とも書かれ、めったに会えないものだという。石燕はこれしか書いていないが、近年では、床下など湿ったところに棲み、これがいると家に調子の悪い人や病人が出たりするという解説がつく。 

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〇海坊主…「海法師」「海入道」とも。夜海に出没し、穏やかだった海面が急に盛り上がり、黒老い坊主頭の巨人が現れて船を破壊するという。船幽霊と共に、海での幻覚談が伝わったとされる。 

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〇のっぺらぼう…「野箆坊」。顔に目・鼻・口のない妖怪。外見は人に近いが、前記の通りの姿である。本所七不思議の「置いてきぼり」に登場したり、小泉八雲の『怪談』の「狢(むじな)」に登場したりする(ただし本編には「のっぺらぼう」のことばは登場しない)。八雲の話のように、タヌキ・キツネ・ムジナが人を化かすパターンとして紹介される。いずれの話でも登場人物は2回にわたって驚かされるところが特徴である。

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