以前、お伝えしたこのコーナーですが、今度はちょっとハード系の本を紹介しましょう。
著者は、美術史家。姫路市立美術館学芸員。明治時代からの銅像の造られてきた歴史を、そして戦中・戦後に造られ(主に軍人)、壊されてきた(戦中は金属供出で、戦後は軍人などが)過程を丁寧に書いています。銅像について一番学術的にまとめているのはこの本ではないでしょうか?
(2)『銅像時代~もうひとつの日本彫刻史』(岩波書店:木下直之)
著者は以前も紹介したが、東大教授。こちらは高村光雲、光太郎親子の話、井伊直弼像や加藤清正像、山県有朋像(この像の転変の話は面白い)から台座の話、それから名古屋城の金鯱の話まで。書き下ろしではなく、いくつの雑誌に掲載の文をまとめたものだが、いろいろな視点から銅像を見ることができる。銅像全般を見るのではなく、その周りのいろいろな話から銅像の問題を知ることができる。
(3)『全国の犬像をめぐる』(青弓社:青柳健二)
この本は、「犬」にかぎって全国の犬の銅像を巡る旅。副題が「忠犬物語45話」とあるが、小樽のブン公のように、消防署で生活をしていたもの、千葉の『南総里見八犬伝』や静岡(磐田市)の「しっぺい太郎」と長野(駒ヶ根市)の「早太郎」が同じ話だったり、なかなか面白い。ちなみに石像だったり、銅像のない「顕彰碑」も含まれる。しかし、ネコの銅像はほとんど聞かないけど何故かな?
(4)『日本の銅像~偉人の英姿』(研文社:阿部和正)
この本は自費出版(2010年刊)。たしか『日本の銅像名鑑』の編集にも参加されていて、打ち上げの会には息子さんが代理参加され、まだまだ銅像蒐集をされていた気がする。
かつては、こうした方がコツコツと銅像をめぐっては自費出版されていた。内容的には、銅像の写真、その方の事績、などがまとめられていて、今の私のブログとほとんど変わらない。ただ本なので、かなりきちんとまとめておられ、勉強になる。今後は、自費出版からブログなどに変わっていくんだろうけど、銅像マニアは数えるほどしかいないからな…。
(5)『石碑と銅像で読む近代日本の戦争』(高文研:歴史教育者協議会編)
銅像を起点に(石碑も)戦争を見ていこうという真面目な本。
(6)『股間若衆~男の裸は芸術か』(新潮社:新潮社)
(7)『せいきの大問題 新股間若衆』(新潮社:木下直之)
銅像本は、私の知るところこれぐらいだと思いますが、木下先生に問題作が2冊。この内容で「タモリ倶楽部」にもご出席された傑作?。日本の銅像(この場合は、私の定義する「オブジェ」像が主になるが…)がなぜ西洋の銅像と違って、裸像(特に男の像)の股間があいまいになっているのかを分析したもの。そこには黒田清輝のような歴史上の人物も顔を出し(芸術として、きちんと出すべき?と主張)、その論争も面白い。私的には、西洋的に男女ともきちんと現わすべきだと思いますが…(笑)。
そういえば、戦前の銅像の英姿を集めた『偉人の俤』という写真集が復刊されたのですが(2009年:ゆまに書房)、私は買いませんでした(今ある方に興味があったので)。現在はAmazonでは、¥29700から古本で扱ってますね…