銅像ハンターtaguttiの銅像ハンティング記

銅像好きがこじれてよじれて20年以上。日本中の銅像ハンティングは続きます…

鳥取県編 その15

〇姑獲鳥(うぶめ)…「産女」。「憂婦女鳥」とも書く。死んだ妊婦をそのまま埋葬するとなる妖怪。鳥と重ねられるのは、中国に、夜に飛行して幼児を害する怪鳥がいて、他人の子どもを奪って自分の子にする習性があり、毛を着ると鳥に変身し、毛を脱ぐと女性の姿になるという。この鳥は子供や夜干しされた子供の衣服に血で印をつけるとされ、付けられた子供はひきつけを起こす。江戸時代初めに中国の伝承と日本の「産女」が重ねられたようだ。鬼太郎シリーズでは、鬼太郎のライバルとして登場する。 

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〇河童…日本の妖怪。体格は子供のようで、全身緑色もしくは赤色。頭頂部に皿が載ることが多い。さらは円形で常に水で濡れている。口は短いくちばしがあり、背中には亀の甲羅のようなものが、手足には水かきがある場合が多い。「川童(かわわらわ)」から「かわわっぱ」となり、カッパに変化したようだ。「河太郎」ともいう。筑後川流域、茨城県の牛久沼周辺など多くの地に伝承がある。 

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〇袖引小僧…埼玉県南部に伝承の残る妖怪。姿を見せずに道行く人の袖を引き、足止めされる悪戯をする。 

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〇ねこ娘…『ゲゲゲの鬼太郎』に登場する妖怪。鬼太郎のガールフレンド。普段は人間の姿だが、ネズミ(ねずみ男を含む)や魚を見たり、怒って興奮したりすると、目が金色、口は耳まで裂け、鋭い牙を出した化け猫の姿に変わる。人間と妖怪の間に生まれた半妖怪。

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〇ぬりかべ…九州北部に伝わる、夜道で人間の歩行を阻む目に見えない妖怪。壁の横を抜けようとも左右どこまでも続き、蹴飛ばしたりしてもダメだが、棒で下の方を払うと消えるという。 

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〇家鳴り…日本各地に伝わる怪異現象の一つ。家や家具が訳もなく揺れだす。鳥山石燕の『画図百鬼夜行』では、小さな鬼のような妖怪の悪戯として描かれる。西洋のポルダーガイスト現象と同一と考えられる。

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〇朱の盆…恐ろしい顔を見せて人を驚かせる妖怪で、これに出会うと魂を抜かれる。本来は「朱の盤」「首の番」と書かれ、「しゅのばん」と言ったらしい。あばら家に泊まった者が、家主に「このあたりでは化け物が出るらしい」と言うと、家主が「そのものはこんな顔でしたか?」と振り返ると、真っ赤で耳まで口の裂けた顔だった、という。

現在の姿は水木しげるがデザインしたもの。ゲゲゲの鬼太郎では、ぬらりひょんの手下として準レギュラー化している。 

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〇海女房…島根県出雲地方、東北の三陸海岸などに伝わる妖怪。磯女に類するもの。出雲では赤ん坊を抱いている。水木しげるは長髪、鱗をつけ、指の間に水掻きを備えた半魚人のように描いた。 

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〇鬼太郎と目玉の親父…水木しげるの創作したマンガのキャラクターである。1954年に紙芝居物語として作った『墓場の鬼太郎』が原点。何回か漫画雑誌に登場した後、1967年の「週刊少年マガジン」から『ゲゲゲの鬼太郎』となる。1968年からはテレビアニメ化された。

鬼太郎は幽霊族の生き残り。隻眼でそれを長く伸びた髪で隠しているが、これは生まれてすぐに人間に蹴飛ばされ墓石で左目を傷つけられたためである。先祖の霊毛で編んだ黒と黄色の横じま模様の「霊毛ちゃんちゃんこ」を羽織る。足にはリモコン下駄を履いている。

目玉の親父は、鬼太郎の父親。死んだ際に一人残された鬼太郎の身を案じ、朽ち果てた肉体から左の目玉だけが溶け出すように蘇り、その目玉に手足が生えた姿となった。茶碗風呂に入ることが好きである。

境港の水木しげるロードには全部で10体の鬼太郎像があります。

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水木しげるロードの中心、用水路に架かる橋のところにいます)

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(「鬼太郎の塔」の下の方にいます)

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 (この像は境港駅前の「世界妖怪会議」のところにいます。ところが調べると、この像は今は、目玉の親父の単体像と同じ、駅から出た最初の信号のところに移っています。「世界妖怪会議」にいる鬼太郎像は、よく似ていますが、頭に目玉の親父を載せ、左手を伸ばしている像です…)

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(鬼太郎の「リモコン下駄」。駅から水木しげる記念館に向かう、最初の信号のところにいます)

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(目玉の親父の単体像。リモコン下駄の道の反対側にいます。)

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(生まれたばかりの鬼太郎と目玉の親父。水木しげる記念館の入り口にいます)

鳥取県編 その14

明けましておめでとうございます。拙い文ですが、本年もよろしくお願いいたします。

 

〇がしゃどくろ(餓者髑髏)…戦死者や野垂れ死にしたものなど、埋葬されなかった死者の骸骨や怨念が集まってできた巨大な骸骨。夜中にガチガチと音を立ててさまよい歩き、生者を見つけると襲いかかり、握りつぶして食べるという。昭和中期に創作されたらしいが、歌川国芳の浮世絵『相馬の古内裏』に描かれた巨大な骸骨の画が参考とされる。 

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歌川国芳の「相馬の古内裏」の巨大骸骨)


〇傘化け…から傘おばけ、一本足、からかさ一本足などとも。江戸時代以降の草双紙、おもちゃ絵、カルタなどに描かれた。一つ目の付いた傘が一本足で飛び跳ねるシーンが描写される。有名だが地方の伝承がほとんどなく、付喪神の一種ともいえる。 

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ゲゲゲの鬼太郎の塔…2008年に作られた妖怪広場の泉の中に立つ塔。9体の像が内外に立つが、画面右端の傘の中から鬼太郎が立小便している姿がシュール。その下の池ではねずみ男が泳いでいるし💦。それ以外は中央の薦の家にカッパとタヌキ。画面左のタワーの上に、河童の三平悪魔くん。塔の下にさざえ鬼と岸涯(がんぎ)小僧。さざえ鬼は、鳥山石燕の『百器徒然袋』に載る妖怪で、頭部分がさざえ、それに手足がついているが、水木しげるは鬼太郎の敵キャラとして活躍させている。岸涯小僧は、鳥山石燕の『今昔百鬼拾遺』に載る妖怪。おかっぱ頭にヤスリのような歯を持ち、魚を捕るという。アニメ版では、第4シリーズで「ねずみ男を尊敬するキャラ」として描かれている。画面の左端にいる小豆洗いは別項で。 

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〇小豆洗い…誰もいない川で、ショキショキと音を立てて小豆を洗うといわれている妖怪。全国各地で伝承が伝わる。小豆はかり、洗濯キツネとも。 

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(「河童の泉」の像)

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水木しげるロードの像)

 

〇方相氏…追儺(ついな)と呼ばれる、大晦日に宮中でおこなわれる年中行事。または民間でおこなわれる。立春(節分)の年中行事で登場する鬼を儺(だ、な)あるいは大儺(だいな)などと共に方相氏が追い払う。方相氏は4つの目を持つ四角い面をつけ、右手に戈、左手に大きな盾を持つ。しかし時代が下がると、方相氏自身が鬼を示す役割に変わっていくらしい。 f:id:tagutti:20210102152835j:plain

 

〇さがり…岡山県邑久郡に伝わる妖怪。馬の首だけの姿で、路傍の古い榎の木からぶら下がった状態で現れる。特に悪さをしないが、鳴き声をあげたりして人脅かすともいわれる。 

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〇手の目…鳥山石燕の『画図百鬼夜行』にある妖怪。座頭姿で両目が顔になく、両掌に一つずつついている。盲人が悪党に襲われ、金品を奪われて殺された者だともいう。 

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〇猫又…日本各地に伝わるネコの妖怪。山中にいる化物と人家で飼われている老猫が化けるものに大別される。山中にいるものとしては、古くは鎌倉時代藤原定家の『明月記』に、江戸時代では紀伊国山中、越中国などで紹介される。一方人家にいるものは、鎌倉時代の『古今著聞集』に載り、しっぽが二つになるというところから、「猫又」とされる。また「化け猫」もいるが、一応違うらしいが、混同される。 

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〇竹切狸…京都府南桑田郡保津村(現亀岡市)に伝わるタヌキの妖怪。山の竹藪に棲んでおり、竹を切る音を立てて人を化かす。「チョン、チョン」とタケの小枝を切る音、「キィキィ」と根元を切る音、「ザザッ」と竹の倒れる音がするが、翌朝のその場所に行っても竹は倒れていない。 

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〇隠神刑部狸(いぬがみぎょうぶだぬき)…伊予国(現愛媛県)松山に伝わる化けタヌキ。享保の大飢饉に際して起こったお家騒動をもとに書かれた、実録物語『伊予名草』、のちに講談話となった『松山騒動八百八狸物語』に登場する。四国は狸の伝説が多いが、松山は7世紀半ばから始まるほど歴史を持ち、江戸時代にその数は808匹となった。その総帥がこの「隠神刑部狸」である。話では、お家騒動の際に謀反側に立って、魁夷を起こして助力したが、稲生武太夫(『稲生物怪録』で知られる藩士)によって、久万山に封じ込められてしまう。 

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〇件(くだん)…19世紀前半から日本各地で知られるようになった妖怪。「件」の字が、「人+牛」というところから、半人半牛の姿となり、生まれてすぐに死ぬが、その間にさまざまなことを予言し、その予言は間違いなく起こるとされる。

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鳥取県編 その13

〇エンコウ…猿猴広島県や中国・四国地方で古くから伝わるカッパの一種。一般的なカッパと違うのは、姿が毛むくじゃらで猿に似ている点。金属を嫌う。肛門から手を入れて生き肝を抜き取るという。 

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〇火取魔…「ひとりま」。石川県江沼郡(現加賀市)に伝わる妖怪、怪現象。こおろぎ橋の近くにある、姥の懐と呼ばれるところを通ると、提灯の火が吸い取られるように細くなり、そこを通りすぎるとまた元通り明るくなるという。新潟県三条市では、イタチの仕業という。水木しげるの画では、上半身が炎で下半身が着流し姿の人間だが、これは江戸時代の山東京伝による草双紙『妬湯仇討話』に出てくる二本足の幽霊である。 

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〇山爺…「やまじじい」。地域によっては山父。一つ目一本足の爺の姿の妖怪。高知県をはじめとする四国地方に伝承される。身長が1m前後、全身がねずみ色の短毛に覆われており、目は二つ目だが、片目が非常に小さいため一つ目に見えるという。イノシシやサルなどの骨をいともたやすくかみ砕くほどの歯を持つため、猟師は山爺を手なずけ、オオカミを追い払うのに使ったといわれる。道に現れると杵をついたような4寸ほどの丸い足跡を残し、またとてつもなく声が大きいという。 

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〇二口女…「ふたくちおんな」。江戸時代の奇談集『絵本百物語』の載る妖怪。後頭部にもう一つの口を持ち、そちらでもモノを食う。下総国(現千葉県)のある家に嫁いだ後妻が、自分の娘ばかり愛し、先妻の娘にはろくに食事を与えず、とうとう餓死させてしまった。その後夫が薪を割っていたところ、振り上げた斧が誤って後妻の後頭部を割ってしまった。やがて傷口が人間の唇のような形となり、突き出した頭蓋骨が歯のように、肉が舌のようになった。傷口はある時刻になると痛み出し、食べ物を入れると痛みが引いた、という。

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〇瀬戸大将…鳥山石燕による妖怪画集『百器徒然草』にある妖怪。付喪神。さまざまな瀬戸物の寄せ集めた甲冑を身につけた姿で描かれる。瀬戸物(東日本における陶磁器のこと)と唐津物(西日本における陶磁器のこと)の争いを描いた趣向となっており、石燕の創作した妖怪だとされる。 

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〇三味長老…鳥山石燕による妖怪画集『百器徒然袋』にある妖怪。付喪神。かつて名人に使われていた三味線が打ち捨てられ妖怪化したものという。石燕の本には「沙弥から長老にはなれず」とう、順序を踏まずに上位にはなれないという諺がひかれていることなどから、石燕の創作した妖怪だとされる。 

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〇ガラッパ…南九州に伝わる妖怪。カッパに似ており、カッパの訛りともされる。鹿児島県薩摩川内市の川内川に生息しているというのが有名。カッパよりも手足が長く、目には見えず声や音だけが聞こえるという。 

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〇あかなめ…鳥山石燕による妖怪画集『画図百鬼夜行』などにある妖怪。風呂桶や風呂にたまった垢を嘗め食うとされる。古い妖怪画では、足に鉤爪を持つざんぎり頭の童子が、風呂場のそばで長い舌を出した姿で描かれている。また『古今百物語評判』には「垢ねぶり」という古い風呂屋に棲む妖怪が記されており、石燕はそれを描いたのではないかとされる。 

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〇田の神…日本の農耕神。稲作の豊凶の見守り、稲作の豊穣をもたらすと信じられてきた神。穀霊神、水神、守護神の性格を持つが、山の神信仰や祖霊信仰との関連も深い。『古事記』『日本書紀』では「倉稲魂(うかのみたま)」、「豊受媛神(とようけびめのかみ)」、「大歳神(おおとしのかみ)」と記された。 

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コケカキイキイ水木しげるの創作した妖怪。『コケカキイキイ』は1970年~71年に「週刊漫画サンデー」に連載したマンガで、死期の迫った老婆、捨てられた赤子、公害で弱った老猫、その猫にとりつくシラミ、この四生物が、同時に死を迎えるときに、「死にたくない、生きたい」という気持ちから誕生した。庶民を救済するために東京へと向かう。庶民の不満を嗅ぎ取って食べることで満足を残す。やがて「コケカ神」として崇められる。 

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〇百々爺(ももんじい)…鳥山石燕による江戸時代の妖怪画集『今昔画図続百鬼』にある日本の妖怪。大きな杖を突いた老人の姿で描かれ、原野に出没する老人の妖怪で、通行人がこれに会うと病気になるとしている。「ゲゲゲの鬼太郎」では、鼻毛針で鬼太郎を苦しめた。 

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ぬっぺっぽう…「ぬっぺふほふ」。江戸時代の『画図百鬼夜行』『百怪図巻』などに載る妖怪。顔と体の区別のつかない一頭身の肉の塊のような姿で描かれる。 

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